突然ですが、なぞなぞです。
「確実に雨を降らせる雨乞いの方法は?」
そう、雨乞いです。
踊ったり祈ったりして「雨よふれー」ってのたまう例のアレです。
確実じゃなきゃだめですよ。絶対確実に雨を降らせる方法。
『ジオストーム』に出てきた気象を操る人工衛星をハッキングするってのはナシです。
どうです分かりましたか?
答えは
「雨が降るまで雨乞いを続ける」
です。
雨がいつかは降るのは当然のこと。
だったらそれまで雨乞いを続ければ「がんばって雨乞いしたらようやく雨が降った」という状況を作り出すことができるってワケです。逆転の発想ってやつですね。
ではこのなぞなぞを踏まえ、もう一問お題を出させて下さい。
次の問題はこうです。
「やると確実に死ぬスポーツは?」
いやいや、そんなスポーツあるわけ無いじゃん!
死ぬとか危険すぎでしょ!
しかも確実なんでしょ!?
むしろあっちゃダメでしょそんなスポーツ!
…と思いますよね。
ところが本当にあるんです、そんなスポーツが。
今回紹介する『フリーソロ』は、その衝撃的な事実を収めた驚異のドキュメンタリーです。
ディズニープラスで観れます。
フリーソロ
2018年 アメリカ
監督:エリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィ、ジミー・チン
出演:アレックス・オノルド(本人)
評価 B
フリーソロ。
それは断崖絶壁を命綱なしで登る究極のロッククライミング。
本作の主人公、アレックス・オノルドはそのフリーソロにとり憑かれた男。人生のすべてを岩壁登りに費やしてきたブッ飛んでいる人物です。
フリーソロは当然危険きわまるスポーツ。劇中でも語られる通り、フリーソロに挑んだ勇敢なクライマーたちの多くが墜落死しています。
でもオノルドたちは死を恐れて諦めたりしない。むしろ危険だからこそどんどん挑んでしまう。
そして絶壁を登り切ったあかつきには、また別の絶壁を探して挑む。
もちろん、一回登頂できたからといって次もうまくいくとは限りません。次こそ死ぬかもしれない。
しかしアレックスたちは挑戦をやめません。
雨が降るまで雨乞いを続ける祈祷師のように、いつか墜落死するまで登り続ける。それがフリーソロに魅入られた男たちの人生なのです。
アレックスはトレーラーハウスで最低限の寝食をまかなっていますが、その暮らしは質素そのもの。
自伝を出版してある程度の印税収入を得てはいるけど、そもそもお金に興味がありません。とにかく頭の中には断崖絶壁のことだけ。
うすっぺらい見解を承知で敢えて言っちゃいますが、一種の狂人ですこの人。
狂人と言うより"規格外すぎて一般人には理解できなくなったレベルの求道者"って感じ。
現に彼は映画中で
「長生きする気など毛頭ない。」
「幸せなど無意味。幸せは何も生まない。」
などなどオンリーワン過ぎる人生哲学を披露。
究極のゴーイングマイウェイ野郎です。
そんな彼が、長年の目標であるヨセミテ国立公園のエル・キャピタン(975mの断崖絶壁)に挑むクライマックスは、観てるこっちが発狂必至の超スリリング映像体験。
この映画が公開されてるってことは、恐らく映画の最後は登頂を達成してニッコリのアレックスが拝めるのだろう…とは頭では分かってますが、そんなリクツを気前よく粉砕する迫力。有無を言わせない圧倒的挑戦。
命綱ナシで垂直の断崖絶壁975mをクライミング!
手汗で小っちゃい池が出来る。
この"狂った偉業"を収めた撮影クルーたちの葛藤が描かれているのも、ドキュメンタリー映画として面白い点でした。
『フリーソロ』の撮影班自身がみんなクライマーなのですが、
「撮影のプレッシャーが彼の集中力を削いでしまうかも」
「最悪、滑落死の瞬間を撮影しちゃうかも」
という恐れを抱いている。
見守る側にも試練を強いるのがフリーソロなのです。
そんなワケで高所恐怖症にはキツイどころじゃない映画『フリー・ソロ』の感想でした。
やっぱアカデミー賞受賞作はモノが違うわ…(;'∀')